駅から家までの道に、一本だけ使われなくなった小道がある。
街灯もなく、雑草が膝の高さまで伸びていて、誰も近寄らない。
けれど、ある晩、終電を逃した俺はなぜかその道に引き寄せられるように足を踏み入れた。
途中まで歩いたとき、背後で「おかえり」と囁く声がした。
驚いて振り返ると、誰もいない。
気のせいだと思い進むと、また「おかえり」。
声が近くなっている。
足がすくんで動けずにいると、横の草むらがガサッと動いた。
何かが、這いずっている。
恐怖で一歩も動けずにいると、携帯が震えた。
ディスプレイには知らない番号からの着信。
そして、スピーカーからまた「おかえり」。
そこでふと気づいた。
この道、俺の家の近くじゃない。
ここ、どこだ?
不意に、後ろから冷たい手が肩を掴んだ。